愚か者、中国をゆく (光文社新書)



愚か者、中国をゆく (光文社新書)
愚か者、中国をゆく (光文社新書)

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生ぬるい

執筆・出版の順番がおそらく逆なのだろう。もっといえば著者の中国とのかかわり方がまだ表面的だったころの話を時間が経ってから描いていて二重に生ぬるい。「転がる香港に苔は生えない」等で描ききれている刹那さ、対峙の記述が、中途半端だ。マイケルとのかかわりに気をさかざるをえなかったからか描ききれていない、あの時代の「におい」や今につながるあのパワー、ふと垣間見せてくれた人情、陽気さをもっともっと思い出させて欲しかった。同時代切符がとれなくて、硬座の座席の下で食べ散らかされたゴミを掻き分けた床で一晩移動したこともある身の勝手な思いでした。
1点疑問。119ページの「硬臥の風景」の写真はRW=RuanWo軟臥。旅の途中で軟臥に乗ったのか、他の時期のものなのか。いずれにしてもキャプションと写真が合っていないです。
20年の時空を越えて

20年前の旅行を振り返り、今の中国に思いを馳せるという不思議な作品。それでも違和感なく読み進められたのは、著者の目線にブレがないためだろか。あと、文章の端々から筆者の人間(本書では中国人と同行者ら)に対する切ないまでの愛情を感じる。筆者の人間性が本を左右する、という当たり前のことを思い出させてくれた本。
中国の常識と日本の常識は違うのです。

公務員(中国の)が列車の利用者を人間扱いしていなかった1980年代の旅行記。
服務員のご都合が最優先で列車が運行されていました。
どっかの国の年金制度のようです。
もうええっちゅうぐらいの極悪な列車旅行。残酷物語です。
旅の相棒は読書にひきこもっちゃうしで、散々な目にあいます。
他の作品も同様に端正な文章と確固とした視点。
良著ですねえ。
「おわりにー」にかかれている近未来の中国には小生も同様の
不安を感じています。国民の間のあまりの格差のおおきさです。
官僚の汚職に対する不満も同じくらいの断絶を生んでいます。
丸腰の人民に最新兵器で鎮圧する政府の軍隊、なんていう映像は
みたくないですね。
青春への郷愁だけではなく「現代中国」と日本との関係性にも目をやる幅広さ

最初は、著者の若い頃(20年前)の旅行記かと思って読み始めた。
たしかのその通りではあるのだが、中国のルポルタージュが縦糸に、
かつての苦い思い出や、今も抱き続ける中国、香港への強いこだわりが横糸になり、
非常に面白く読めた。
「転がる香港に苔は生えない」もさすがだったが、この著者は、自らを真剣に見つめる目を持っている。
これはノンフィクションライターとして不可欠のものだと思う。

もっとも……文章のタッチは軽い。
ユーモアもあり、その中に異文化交流(とひと言で言い切れないのだが)に戸惑う著者の姿も見られ、
考えさせられることも多かった。

こういうアジアものの紀行文は少なくないが、沢木耕太郎などとはまったく違った味を出している。
自らを「愚か者」と言いつつ、そんな自分を嫌いになれない。中国とも縁を切れない……。
そんな「ゆらぎ」が感じられる素晴らしい紀行文である。

青春のほろ苦さと中国への危惧

20年前のほろ苦い旅の思い出とあまりにも急激な社会変化で
破綻しそうな現在の中国への危惧を違和感なく描ける著者の
技量はさすがです。
バックパッカーの経験のない私にさえ、20年前の旅が
リアルタイムで迫ってきました。その中で "idiot" が
様々な意味でうまく使われています。
片や現在の中国に対する危惧がウォシュレットとその隣の
(トイレットペーパーを捨てる為の)ごみ箱で表されています。
96年に北京に行った時見たごみ箱にあったピンクのトイレット
ペーパーを思い出しました。
私にとっての中国とは一言でいうと "too much" です。
その中国が破綻したら日本のバブル崩壊なんていう生易しい
ものではなく全世界に影響するだろうと思うと恐ろしくなりました。



光文社
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